河崎
江戸時代からの
商人の町並みや文化が残る
江戸時代から残る、黒塗りの蔵や風情ある商家が並ぶまち「河崎」。
河崎は、伊勢を流れる勢田川の水運をいかしてお伊勢参りをする人々に物資を供給し、問屋街として栄えたことから「伊勢の台所」と呼ばれた。
今回は、河崎商人たちの当時の暮らしや文化に触れることができるスポットや、趣ある古民家を利活用したお店について紹介する。
スポット紹介
伊勢河崎商人館
江戸時代に創業され、300年続いた酒問屋「小川酒店」を修復・整備した「伊勢河崎商人館」。
伊勢河崎商人館では河崎の文化・歴史について、実際の蔵や町家、建物内に残された品々を通じて知ることができる。
伊勢河崎商人館は蔵7棟、町家2棟、600坪もの敷地があり、河崎を代表する文化施設。
平成13(2001)年にはすべての建物が国の登録有形文化財に指定された。
河崎商人は、和歌やお茶など、様々な文化への造詣も深かった。
母屋には、京都の裏千家の茶室「咄々斎 (とつとつさい)」の写しがある(明治末期のもの)。
これは、裏千家との交流の証であり、許しを得て特別に作ることができたもの。
お茶室は8畳ほどの広間になっており、15名ほど入れるような造りになっている。
伊勢河崎商人館内には、日本最古の紙幣「山田羽書(やまだはがき)」が展示されている。
誕生したのは江戸初期といわれており、明治初期まで伊勢周辺で使われた。
伊勢河崎商人館の入館時は、山田羽書と同じサイズのチケットを受け取る。
河崎の商家の屋根瓦には、立派な鬼瓦や、「隅蓋(すみぶた)」と呼ばれる、建物に水が入ることを防ぐフタの役割を果たす飾り瓦がついている。
隅蓋は亀や蛙、桃、波など、水や縁起物に関した意匠がかたどられており、火除けなどの願いが込められているそう。
伊勢河崎商人館以外にも河崎地域の家の屋根瓦にも隅蓋が施されている。
様々なデザインの隅蓋があるため、まちをゆっくり歩きながら探して回ってみるのも楽しい。
伊勢河崎商人館の入館料は、大人350円、大・高学生200円、中・小学生100円。
ボランティアスタッフによる無料ガイド(要予約)を受けることもでき、河崎商人の暮らしぶりや、文化についてより深く知ることができる。
〒516-0009
三重県伊勢市河崎2丁目25−32
0596-22-4810
[営業時間]9:30-17:00
[定休日]火曜日(火曜日が祝日の場合翌日)
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Cafe わっく
古民家をリフォームして作られた「Cafe わっく」。
手仕込みのハヤシライスや、ふわふわフレンチトーストが人気。
ハヤシライス ミニサラダ付(税込979円)は、伊勢の老舗精肉店「めし勇」の牛すじ肉を、トロトロになるまで煮込み、コクのあるデミグラスソースと合わせた逸品。
旨味と酸味が絶妙なバランスで溶け合っており、やみつきになること間違いなし。
+100円でスープを付けることも可能。
また、ハヤシライス ミニサラダ付(税込979円)と同じ値段でハヤシライス小盛+サラダ+スープの組み合わせへと変更できるほか、追加料金で大盛、トッピングなど、多様なバリエーションの味わい方がある。
ランチタイム~17時まで、ドリンクを頼むとフレンチトーストがもれなくついてくる。
卵とミルクをたっぷり使ったフレンチトーストは、ふわふわモッチリ食感。
口の中でじんわり優しい甘みが広がる。
ホットコーヒーはポットに入ったたっぷりサイズで税込572円。
豆のブレンド・焙煎にこだわり丁寧に淹れられたコーヒーと、優しい甘さのフレンチトーストの相性は抜群だ。
〒516-0009
三重県伊勢市河崎2丁目6−8
0596-67-4539
[営業時間]11:00-22:00(21:30LO) ※15:30-18:00close
[定休日]月曜日定休・火曜日不定休
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河崎の歴史・魅力
和具屋商店
ここからは、
和具屋商店15代目当主の大西佐一さんに、河崎の歴史や魅力について伺う。
河崎の歴史がここに
和具屋商店は元禄年間(1688~1703)創業の老舗陶器問屋。
店内には江戸や明治、大正期の焼き物が並び、64メートル続く蔵の中には古文書に錦絵、浮世絵、古地図や古銭も残されている。
まちかど博物館に指定されており、店や蔵は税込200円で観覧可能。
「1、2代目は魚問屋で、御師も務めていたそうです。伊勢神宮の参拝客をもてなした門前町の需要に応える形で、3代目から陶器問屋に商売替えをしました。」と大西さん。
和具屋商店の蔵と、河崎の歴史
入り口から蔵の奥までは64メートル、かつてはその倍ほどの奥行きがあったそう。規模の大きさから、当時の河崎商人の繁栄の様子がうかがえる。
蔵の奥まで伸びるトロッコレールは、荷運びに使用されたものだそう。
「勢田川についた船を荷車に乗せて蔵の入り口へ。そこからはトロッコレールに乗せ換えて店の奥まで運び、蔵の中で荷物を保管しました。
ちなみに三河や常滑から来た製品は、レンガや瓦、土管など重たいものが多かったので、それらを船から直接荷揚げして保管できるような川沿いの倉庫もあったんです。
ただ、昭和49(1974)年の「七夕水害」が起きてしまったことで、川沿いの蔵は護岸工事の対象エリアとなり、残念ながら取り壊しを余儀なくされました」
河崎商人がたしなんだ文化
「昔の河崎商人たちが収集した錦絵や浮世絵が残されています。
日記が残っていて、伊勢の芝居小屋から浮世絵を買ったという記録を目にしました。
河崎商人はお金持ちが多く、豊かな生活を送っていたようです。
商人たちは芝居小屋や絵、工芸品など鑑賞・収集するだけでなく、自ら墨絵を書いたり、お茶や歌を習ったりするなど文化の習得にも励んでいたようですよ。
今の私たちの世代もそうなのですが、河崎商人は一匹オオカミ気質で普段はあまりなれ合わない。
習い事に熱心だった先人たちを思うと、自立心が強い性格の裏返しなのかもしれません。
ただ、父の世代もそうだったのですが、地域の大きなお祭りで寄付金が多めに必要であれば、通常は町民全員から寄付金を集めるところを、河崎では商人たちがぽんとお金を出したり、取り組むべき問題があった場合は皆で一致団結して解決していました。」
河崎商人の暮らしの記録
「商人たちが丁寧にまとめた記録が残されています。これ(写真)はおそらく、明治時代、船をどこに出したか記した帳簿ですね。
そのほかにも、江戸時代のもので、半年に一度記録するの売上帳簿、正月・節分・盆など時期ごとに家で作るべき料理などが書かれた書物なども残っています。
ちなみに簡略した形ではありますが、時期ごとに作るべき料理は受け継いで、現在も作り続けています」
蔵の2階に上がると、手斧削りの梁や柱が江戸中期の建築当時のまま残されている。
窓にはめ込まれているのは、職人の手仕事が光る大正時代の磨りガラス。
和具屋商店は360度どこを見ても正に「博物館」で、保管されているものたちに圧倒される。
江戸・明治以降の生活用品や伊勢木綿などの伝統工芸品も保管されており、小学生たちが社会見学に訪れることもあるそう。
伝統工芸品の中には、現在は職人が途絶えて作られることのなくなった貴重な「山田傘」も。
真空管ラジオは今も使用することができ、つまみをひねると暖かみのある音が蔵の中に響いた。
大西さんご自身の思い
「小さいころ、船に乗せてもらって勢田川を渡り、川から二見の花火を見た思い出があります。
時が経ってだんだんと運送手段が水運から陸運に置き換わり、船も蔵も使われなくなっていきました。
そんな中で、一度使われなくなった蔵などを改装して新たに商売を始めるお店も増えてきたのは、嬉しいことですね。
これからの河崎がどうなっていくのか、楽しみです。」
〒516-0009
三重県伊勢市河崎2丁目19−32
0596-28-2840
[営業時間]8:30-17:00
[定休日]不定休